米国の再就職支援会社 Challenger, Gray & Christmas は、企業が発表した人員削減を毎月集計し、その理由も分類しています。2026年6月の集計では、米国企業が発表した削減は4万5,849人でした。このうちAIを理由とするものは1万4,029人で、全体の31%です。
ここで重要なのは、4万5,849人と1万4,029人はまったく違う数字だということです。前者は「その月に発表された人員削減の総数」であり、市場環境の悪化、事業再編、拠点閉鎖など、AIとは無関係な理由を含みます。後者だけがAIを理由として挙げられた分です。
この区別は見出しでは失われがちです。「米国で4.5万人が削減、理由の1位はAI」という書き方をすると、4.5万人全員がAIによって職を失ったように読めます。実際にAIが理由とされたのはその3割です。
同じ問題は個別企業の発表でも起きます。BT Groupは2023年、2030年度末までに最大5万5,000人を削減する計画を公表しました。当時のCEOはこのうち約1万人がAIに置き換わるとの見方を示しています。残りの大半はファイバー網の敷設完了や3G停波にともなうもので、AIとは関係がありません。「BTがAIで5.5万人削減」と書けば、実態の5倍以上になります。
当データベースでは、影響人数の欄にAIに帰属すると確認できた人数だけを入れています。見出しの総数は本文に書き、集計には使いません。この方針は、2026年8月に自分たちの集計値が実態の4.4倍に膨らんでいた誤りを見つけて修正した経験から明文化したものです。総数を入れていたことが原因でした。
AIが雇用に影響していないと言いたいわけではありません。AIを理由とする削減が月次の1位になり続けているのは事実で、これは2023年には見られなかった状況です。ただし、その規模を正確に見るには、報じられる数字がどちらのものかを毎回確かめる必要があります。
本記事は AI失業.com 編集部が、イベントデータベースに登録された情報をもとに作成した解説です。 元になったイベントの一次情報・信頼度・AIとの関係の判断根拠は、下記の詳細ページで確認できます。