イメージ2026年7月28日、Visaは従業員の約7%にあたる約2,600人を削減する方針を社内メモで示しました。同じ日に発表された2026会計年度第3四半期の決算は、純収益が前年同期比14%増の116億ドル、GAAPベースの純利益が7%増の56億ドルです。増収増益でした。
monday.com も同様です。2026年7月22日にSECへ提出した届出書で従業員の約20%を削減すると届け出た一方、同じ文書で2026年通期の見通しを「据え置きまたは上振れ」とし、非GAAP営業利益率の予想を約13%から約15%へ引き上げています。削減は業績の下振れによるものではありません。
この形は日本で先に名前がついていました。「黒字リストラ」です。
当サイトが記録している「見えない失業」の指標では、2025年に上場企業が募集した早期・希望退職は1万7,875人。このうち**85%は、直近の決算が黒字の企業によるもの**でした。業績が悪いから人を減らすのではなく、業績に余裕があるうちに構造を変える。日本ではこの数年、そちらが主流になっています。
つまり「業績が悪化したから人を減らす」という前提そのものが、もう成り立っていません。
ではなぜ、儲かっている会社が人を減らすのか。企業側の説明を並べると、共通しているのは「いま必要な仕事の中身が変わった」という言い方です。
Visaのライアン・マキナニーCEOは社内メモで「会社全体で効率を高め、最も可能性の高い機会へ再投資し続ける」と書きました。monday.com の届出書は「より無駄のない、集中した運営モデルを支えるため」としています。Chimeのクリス・ブリットCEOは「階層の少ない小さなチームの方が、かつてないほど速く動き、より多くを成し遂げている」と述べました。いずれも、コスト削減というより配置の組み替えとして説明されています。
ここでAIがどこに効いているのかは、注意して読む必要があります。
monday.com の届出書は、再編の目的を「AIワークプラットフォームへの戦略的集中」と明記しています。Chimeは、CEOのメモが「AIは可能なことを変えているが、新しい技能を必要とする」と述べています。この2社については、企業自身がAIを理由として挙げています。
一方でVisaは、CEOのメモが「AIもこの変化を加速させ、Visaで仕事が進む形を作っている」と触れてはいるものの、同社はCNBCに対して**AIは重要な役割を果たしたが唯一の原因ではない**と述べています。AI起因分の内訳も示していません。そのため当サイトは、Visaの2,600人をAI失業カウンターに計上していません。
同じことは英国でも起きました。ブリティッシュ・ガスを所有するCentricaは2026年7月、今後2年で約1,300人を削減すると発表し、多くの報道が「AIのチャットボットが人手を置き換えた」と伝えました。しかしクリス・オシェアCEOは、AIが主な理由ではないと明言しています。顧客の90%超が最初にデジタル経路を使うようになり、電話での問い合わせが20%減ったことを理由に挙げました。
報道の見出しと、企業自身の説明が食い違っている。当サイトはこの事例も収録していますが、人数は計上せず、AIとの関係も「間接的」として記録しています。企業が否定していることを、当サイトが断定することはできないからです。
整理すると、増収増益の下での人員削減には少なくとも3つの型があります。①企業が法定開示や公式メモでAIを理由として明記したもの(monday.com、Chime、Cloudflare)②AIに触れてはいるが、唯一の理由ではないと企業自身が言うもの(Visa)③報道はAIと結びつけたが、企業が否定するもの(Centrica)。この3つを同じ数字として足し合わせると、実態より大きな数字ができあがります。
読者にとって実用的なのは、たぶんこの点です。**自分の会社が赤字でないことは、もう安全の理由になりません。** 早期退職の募集人数が2023年の3,161人から2025年の1万7,875人へ増えるなかで、募集した企業の数は2024年の57社から2025年は43社へ減っています。少数の企業が大規模に募集する形へ変わったということです。次にどの会社が動くかは、決算からは読めません。
本記事は AI失業.com 編集部が、イベントデータベースに登録された情報をもとに作成した解説です。 元になったイベントの一次情報・信頼度・AIとの関係の判断根拠は、下記の詳細ページで確認できます。