AIをめぐる議論では「影響を受けやすい職種(AI exposure)」という指標がよく使われます。事務、経理、翻訳、カスタマーサポートなどが上位に挙がり、これらの仕事は減っていくと語られます。IMFは2024年、世界の雇用の約40%、先進国では約60%が何らかの形でAIの影響を受けると推計しました。
ではその予測どおりに雇用は減ったのか。カナダ統計局が2026年1月に公表した分析は、2022年11月から2025年12月までの実際の雇用データを使ってこれを検証しています。結論は「AIへの潜在的な職業上の影響度や補完性にかかわらず、雇用はおおむね増加した」でした。
AIによる代替可能性が高く補完性が低いとされる職種でも、男性で約10%、女性で約5%の雇用増が見られています。コード作成が中心の職種では約15%増で、他職種の約5%を上回りました。ただしこの差は統計的に有意ではないと注記されています。
つまり「影響度が高い」は「代替される可能性がある」という意味であって、「雇用が減った」という観測ではありません。この2つは混同されやすく、混同したまま将来を語ると悲観が過剰になります。
一方で、この分析には無視できない条件が付いています。学歴による差です。高学歴層は10〜20%の堅調な伸びを示したのに対し、高卒以下の層では「AIへの潜在的な影響度にかかわらず、雇用の伸びがほとんど、あるいはまったく見られなかった」とされています。
AIの影響が職種ではなく学歴の線で出ているとすれば、対策の立て方も変わります。「この職種は危ない」という話ではなく、「同じ職種のなかで誰が伸びているか」を見る必要があるということです。なお、この分析はカナダの3年間の話であり、他国や今後の期間にそのまま当てはまるとは限りません。
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