イメージAI失業.comのイベントデータベースには、企業名・日付・人数が特定できる出来事を1件ずつ記録しています。この形式は海外の事例とはよく噛み合います。米国では大量解雇に事前通知の義務があり、上場企業は人員削減を適時開示し、Challenger, Gray & Christmas のような調査機関が毎月の削減発表を理由別に集計しています。2026年5月には米国企業の削減発表9万7,006人のうち3万8,579人がAIを理由とするものだと集計されました。数えられる形で出てくるのです。
日本は違います。国内の実データを集めていて繰り返しぶつかるのは、雇用が絞られているのに「出来事」にならないという壁でした。理由は3つあります。
1つ目は、日本の人員削減が「解雇」ではなく「早期退職・希望退職の募集」という形をとることです。会社が一方的に辞めさせるのではなく、条件を示して本人に応募してもらう。手続き上は本人の意思なので、統計では自己都合退職に分類されます。海外のレイオフと同じ現象なのに、同じ言葉では捕捉できません。
2つ目は、採用の縮小です。新卒採用の計画を減らしても、既存の社員は誰も職を失いません。失業率は動かず、報道にもなりにくい。しかし数年たてば、その企業で働いている人数は確実に減っています。誰も職を失わないまま雇用が縮む、という形の縮小です。
3つ目は、職種ごとの偏りが全体の数字に埋もれることです。事務職の求人だけが細っていても、介護や建設の求人が旺盛であれば、全体の有効求人倍率は下がりません。「雇用は堅調」という見出しの裏で、特定の職種の入口だけが閉じていく。
この3つは、1件ずつの出来事としては見えません。時系列の数字でしか見えない。そのためAI失業.comでは、イベントデータベースとは別に「見えない失業」の指標を持つことにしました。
たとえば上場企業の早期・希望退職の募集人数は、2023年の3,161人から2024年に1万9人、2025年には1万7,875人へと増えています。2025年は東日本大震災の年(2012年・1万7,705人)を上回り、リーマン・ショック以降で3番目の高さです。ここで重要なのは、募集した企業の数は2024年の57社から2025年は43社へ減っているという点です。社数だけを見れば「リストラは減った」と読めてしまう。実際には、少数の企業が大規模に募集する形へ変わっただけでした。件数と人数は分けて見る必要があります。
しかも2025年の募集人数のうち85%は、直近の決算が黒字の企業によるものでした。業績が悪いから人を減らすのではなく、黒字のうちに構造を変えるという動きです。「黒字リストラ」と呼ばれます。
採用の側も動いています。大卒求人倍率は2025年卒の1.75倍から2026年卒は1.66倍へ下がりました。とりわけ情報通信業は2.15倍から1.90倍へと大きく落ちています。米国では、生成AIを導入した企業で実務経験の少ない層の採用が四半期あたり約8割減ったという研究も出ています。既存の社員を減らすより先に、入口が閉じる。
ただし、これらの数字をAI失業カウンターには足していません。早期・希望退職の募集は事業再編・業績・年齢構成の是正など理由がさまざまで、AIを理由とするものだけを取り出した数字ではないからです。カウンターは「AIに帰属すると確認できた人数」だけを数えるという約束で運用しており、その約束を守るために、意味の違う数字は別会計にしています。
日本の雇用は、AIの影響が無いから静かなのではありません。静かに進む形をしているだけです。見るべき場所が違う、というのがいまのところの結論です。
本記事は AI失業.com 編集部が、イベントデータベースに登録された情報をもとに作成した解説です。 元になったイベントの一次情報・信頼度・AIとの関係の判断根拠は、下記の詳細ページで確認できます。